彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
プロローグ
Hôtel De Suite Berigaoka
《ホテルデュスイートべりが丘》
全室オーシャンビューテラス付きの高級ラグジュアリーホテル。エントランスを抜けると、中央で煌びやかに輝く豪華なシャンデリアと、光の庭園と称されるイルミネーションに彩られたロビーラウンジが非日常へとゲストを誘う。
これから、大手総合商社、高椿グループ創立100周年パーティーが大ホールで開催されるのだが、その前に、ロビーラウンジでウェルカムドリンクが振る舞われることになっている。
開催時間が近づくにつれ、招待された各界の著名人が続々と姿を見せた。
高椿会長の孫である専務が圧倒的なオーラを放ち招待客を出迎える。
テレビ画面でお目にかかる人物が時折立ち止まり、こちらに視線を向けたが、思ったほど緊張することはなく "楽しい" 気持ちの方が勝っていた。
イルミネーションに溶け込むようにセットされた最高級のグランドピアノに向かい、ロングドレスを身に纏った私はクリスマスソングを奏でる。
ロビーラウンジに集う彼らの会話の邪魔にならないよう、心地よく耳に届くよう、その場の雰囲気に注視しながら鍵盤を弾いた。
♩♩🎵🎵♩♩♩♩🎵🎵♩♩♩♩🎵🎵♩♩♩♩♩♩♩
最後の曲が終わり、私は静かに席を立つ。
バックヤードに戻ろうと、ピアノに背を向け足を踏み出したその時、グイッと誰かに腰を抱かれた。
見上げると、見覚えのない端整な顔が片方の口角を上げている。
「元気そうで何より」
「え?」
「恩を返してもらおうかな」
「恩、返し?」
「そう、恩返し。」
「俺の隣にいてくれればいいだけだから」
耳元で囁く色気ある声に、心臓がドクンと跳ねた。
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