彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「美音、俺も大概最低な男だ。互いに愛のない相手でありながら夜を過ごしたこともある。幻滅しただろう?」

驚いたけど幻滅なんかしない。ちゃんと伝えなきゃ。

「幻滅なんかしません。最低だとも思いません!」

「美音……」

彼が私の頬を優しく包む。

「今、この瞬間から一緒に幸せにならないか? 俺たちの時間を進めるんだ」

「私たちの時間……」

「そう、俺たち二人の時間」

この人となら一緒に進んでいけそうな気がする。
彼の目を見てしっかりと、

「はい」

そう答えた。

「好きだよ、美音」

「私も好きです、俊佑さん」

彼の知性を詰め込んだキレイな眼が激しく瞬いている。

「今、聞き間違いではないよな。美音の口から好きって」

「俊佑さん、ずっと思ってくれいて、大切にしてくれて、私は幸せ者です」

目の前の端正の顔には、穏やかな笑みが浮かんでいる。優しい眼差しで私を見つるその表情は、私だけの宝物だ。

「今すぐでなくていい。美音が来たいと思った時に来ればいい。ここに居たいと思った時に居ればいい。一緒に暮らしたい、そう思った時に引っ越してくればいい。この鍵、受け取ってもらえるよな?」

「はい」

私は手のひらの上の合鍵をギュッと握りしめた。


「なぁ美音、今夜一緒に行って欲しいところがあるんだが、付き合ってくれるか?」

「はい、どこに行くんですか?」

「内緒。あぁそうだ、その前にやることがあった。美音出かけよう」

いったいどこに行くのだろう。
想像もつかないけれど、とても楽しみにしている私がいる。
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