彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
マンションを出た私たちは、高級ジュエリーショップのVIPルームにいる。沙織さんと訪れたドレスショップの隣だ。
ソファーに腰掛けた私たちの前には数点のネックレスが並べられている。それらに使われている石は私の誕生石、ルビーだ。非加熱ピジョンブラッドルビーというものらしい。
きっとどれも目眩がしそうなほどの金額に違いない。

「美音、好きなデザインはどれ?」

「どれも素敵で……」

選べない。もし、選んだジュエリーがとんでもない値段だったらと思うと、恐ろしくて選べない。

どうしよう……

「俺はコレかな」

私の気持ちを察したのか、俊佑さんが右端にあったネックレスを指差した。
彼が選んだのは、プラチナベネチアンチェーンに雫型のルビーといったシンプルだけど、気品を感じさせるものだった。

「美音、つけてみようか。髪を上げてくれるかな」

彼が私の後ろに回り込みネックレスをつけてくれようとするのだが、彼の指先が首筋に触れる度、身体がうるさいくらい反応してしまった。

「まぁ!とてもお似合いです」

スタッフの大げさとも取れる褒め言葉に、俊佑さんは満足そうな表情で頷いている。

「美音、どうだ? 」

鏡に自分の姿を映し込んだ。上品だけれど、密かな情熱を秘めたように輝くルビーに、私の心はあっという間に奪われてしまった。

「よし、これにしよう」

彼の顔を見やると、軽く頷かれた。完全にに私の心は読まれている。

ネックレスは私の首元で輝いたまま、今度は左手薬指のサイズを測られた。
戸惑いの表情で彼に問いかけると、

「すぐに必要になるから測っておかないとな」

と、宝石のような笑顔を向けられたのだった。
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