彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
俊佑さんがお風呂に入っている間に、手際よく調理する。調理器具は驚くほど本格的なものが揃えられていて、食器も豊富にある。
こんなにワクワクしながら料理をしたのは初めてかもしれない。

「いい匂いがする」

黒のルームウェア姿で、濡れた髪をタオルで軽く拭きながらリビングに入ってきた風呂上がりの彼に、心臓がドクンとはねた。

「凄いな、風呂に入っている間にこれだけのものを作ったのか」

テーブルに並べた料理をまじまじと見つめている。

豚汁、鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし、白ごはんといった、定食屋さんのメニューにありそうなもので、短時間で作れるものだ。白ごはんは早炊きにしたので、少し硬いかもしれない。

今度は私の背後に立ち、手元を覗き込んだ。ふわりと漂うボディーソープの香りが益々鼓動を激しく脈打せる。

落ち着け私!

「簡単なものですが、どうぞ召し上がってください」

「これ、簡単には作れないだろう。美音は天才だ」

「褒めすぎです。さぁ、どうぞ」

「いただきます」

席につき、手を合わせ、美しい所作で口に運ぶ。

「美味い!なんだこれ、美味すぎる!美音はやっぱり天才だ」

「うふっそんなに褒められたら調子に乗ってしまいますよ」

「調子に乗った美音も見てみたいな。絶対可愛いに決まっている」

この人は私を褒め殺す気だろうか。でも、ちゃんと気持ちを言葉にしてくれる俊佑さんが大好きだ。
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