彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
今日のバトルも激しかった。でも、凄く嬉しい。愛されていると実感できるから。

なかなか引かない沙織さんの性格はわかっている。なので、こういう時は、ツインタワーにある会員制のカフェで一時間ほどおしゃべりをする。
新作のスイーツや、新しく発売される化粧品やファッションの話など、雑誌丸ごと一冊分あるのではないかと思うほどの情報を教えてくれるのだ。

いつものように、カフェに出かけ、一時間ほどで戻ってきた。
玄関ドアを開けると、いつも俊佑さんに抱きつかれる。けれど、今日は抱きついてもらえなかった。
寂しいな、そう思いながらリビングのドアを開けると、彼はクッションを胸に抱えてソファーに寝転がっていた。

「ただいま」

彼の顔を覗き込む。

「独りぼっちにさせてしまってごめんなさい」

「楽しかったか?」

「うん」

「そうか、よかったな」

プイッとそっぽを向いた。

拗ねている。もの凄く拗ねている。笑ってはいけないところだけれど、可愛すぎて顔が緩んでしまう。
頼り甲斐があって、いつもスマートな彼が見せるこういうところは本当に狡いと思う。

「俊佑さん」

「ん?」

「こっちを向いてください」

と言っても、向かないだろうなと思ってはいたが、やっぱり向いてくれない。
仕方ない。

私は彼の頬に手を添え、無理矢理顔を私に向けさせた。
 
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