彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
え……
勇み足だったかな。
どうしよう、積極的すぎて引いてしまったのかもしれない。
かなり堪える。
気持ちが急降下していく中、部屋のドアが開き、彼が戻ってきた。

「美音、これ」

私の目の前で一枚の紙を広げた。
婚姻届だ。既に俊佑さんの記入は済んでいる。

「逆プロポーズって、結構いいもんだな。それからこれも」

ブランドのロゴが入った赤色のアクセサリーケースを取り出し蓋を開けた。お揃いのプラチナリングが並んでいる。

「証人の欄は、永峰夫妻にお願いしようと考えているんだが、いいよな?」

私は頷いた。何度も何度も頷いた。
まさかここまで用意していたなんて、驚きと嬉しさが入り混じる。

「永峰夫妻にサインをもらったら、二人で役所に届けに行こう。今日はもう家から出たくない。ずっと美音を独り占めしたい」

俊佑さんは私を軽々と抱き上げ、自室のベットに横たえた。彼の唇が私の唇を優しく塞ぐ。

「美音、愛してる」

媚薬のような甘い囁きと愛撫に、心も身体もぐずぐずに蕩けていった。
初めて彼と身体を重ねる。痛みは全く感じなかった。今まで味わったことのない快感が、私の中に色濃く刻まれた瞬間だった。
ただただ痛いだけの行為だと思っていたものが、そうではないことを知った。
彼の温もりに包まれながら、私は幸せを噛み締めていた。
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