彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「あの女、女優の廣藤愛莉、で、男は、言わなくてもわかるよな」

この状況はいったいなんなのだろう。何がどうなって、こういうことになっているのだろう。なにか理由があるはずだ。

「知ってるか? 廣藤愛莉はアメリカで体調を崩して次男に助けられたんだ。それで、次男に堕ちた。廣藤会長は孫娘を溺愛しててな、廣藤愛莉が欲しがるものはどんな手を使ってでも手に入れる。界隈では有名な話さ。お前、高椿のパーティーでアイツに腰を抱かれて挨拶をしていただろう」

「どうしてそんなこと知ってるの⁉︎」

驚いて俊哉の顔を見やった。

「俺もあの場にいたから」

「えっ?」

何故あの場所に俊哉が? 招待されていたというの?
でもどうして?招待される理由は?でもそんなことより俊佑さんだ。

慌てて視線を戻すと、二人を乗せたセダンは走り去ってしまった。

「どうせ女避けに利用されたんだろう。なぁ、美音、お前、あいつとやったか?」

「やったとかそういうこと言わないで!」

「はっきり言うけど、お前のセックスじゃアイツ満足しないと思うぞ。俺みたいに必ず別の女を抱く。断言してもいい。お前とのセックスじゃあ、満足どころかストレスが溜まるかもな。医者は性欲が強いって聞いたことがあるし、もしかしたらもう、廣藤」

「やめてっ!彼をあなたと一緒にしないでっ! 帰る!」

俊哉の腕を勢いよく振り払い、私は逃げるように駆け出した。

「そんなことあるわけない!あるわけない あるわけない あるわけない」

涙で視界が滲む。
立ち止まり、スマホを確認した。
既読なし。

私はフラフラと歩き出す。
気分が悪い、目眩もする。
あぁ、嫌だなぁ、この症状。でも歩けそうだ。
私は彼と暮らすマンションではなく、気がつけば実家に戻っていた。

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