彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
想いのままに
◇◇◇◇◇

『美音』

私を呼ぶ声がする。
愛しくて、とっても優しい声だ。私は声に導かれるようにゆっくりと瞼を持ち上げた。

「美音」

一番会いたかった人が目の前にいる。
でも、ここは実家のマンションだ。
夢?

「俊佑さん?」

「美音」

返事が返ってきた。夢じゃない!
私は勢いよくソファーから飛び起きた。

「えっ⁉︎ どうしてここに?」

「迎えにきた」

「迎えに来たって、どうやって入ったの?」

「これを使ったんだ」

目の前に鍵を差し出した。
音符のキーホルダーがついている。我が家のスペアキーだ。

「空港に送って行った日、お母さんから預かった」

家族以外誰も入れてはいけない、そう拒んでいたのに……

「美音、ごめんな」

俊佑さんの大きな手が私の頬に触れる。

訊きたいことはたくさんある。だけど、彼が目の前にいる。それだけで、胸がいっぱいになり言葉が出てこなくなった。

「一緒に帰ろう、美音」

私はゆっくり頷いた。
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