彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「今日は俺たちの結婚記念日だな」
「そうですね」
「お祝いに飯でも食べにいくか。ツインタワーのフレンチにしよう。夜景も絶景だ。本当は温泉に行きたかったんだけど、もうヘリを飛ばせない」
ん?私、今なんかヘリって聞こえたんだけど……
「俊佑さん、今、ヘリって言いましたよね?」
「言った」
「夜景を見せてくれた時も思ったんですけど、どうしてすんなりチャーター出来たりするんですか?」
「それはね、カード会社のコンシェルジュサービスを利用しているからだよ。俺の使っているカードに付帯しているサービスだ。24時間365日、いつでも対応してくれる。ノーを言わないことで有名なんだ」
涼しい顔で言うけれど、そんなカードを持てる人なんてそうそういないでしょうよ! 心の中で突っ込んだ。
「高椿の人間はみんな使ってる。美音も俺が家族カードを作るから、それを持つといい。欲しいものがあればそれで買えばいいしね。試しにレストラン、予約してみよう。美音、ツインタワー最上階のフレンチでいいか?」
小刻みに頷く私の顔は、きっと引き攣っているに違いない。
彼がスマホを操作する。
するとすぐに彼のスマホが震えた。
「よし、美音、1時間後だ。その前に服を買いに行こう」
私の手を取り、意気揚々と高級ショップに向かう。
それから自宅に戻るまで、俊佑さんのエスコートで、眩いばかりの時間を過ごした。
まるでお姫様になったような気分だった。
買ってもらった淡いブルーのワンピースドレスを纏いマンションに戻ってくると、お姫様抱っこでベッドに運ばれ、俊佑さんとの熱いソワレが待っていた。
朝日が昇り、シーツに包まったままついばむようなキスを繰り返すと、彼がゆっくり目を覚ます。
「おはようございます、俊佑さん」
「おはよう、美音」
色気ある寝起きの声に蕩けそうになる。
私はもう、彼なしでは生きていけそうにない。高椿俊佑という鍵盤でなければ、愛を奏でることはできないだろう。