彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
理由を訊くと、「こちらには無敗の最強弁護士がついているのよ」と爽やかなウインクを私にくれた。

「それにしても、あんなチープな計画で俊佑と美音ちゃんを引き裂こうなんて、ホントお馬鹿さんな人たちね」

沙織さんに軽くあしらわれる二人が、ほんの少しだけ、ほんのほんの少しだけ、不憫に思えてしまった。


そんな沙織さんに、私は相変わらず愛されている。
彼女もまた、俊佑さんに負けず劣らずの溺愛ぶりだ。側から見れば、競い合っているようにしか見えないのではないか、と、思っている。

カナダから帰国した日、大量のお土産を抱えてやって来た沙織さんを出迎え、「お帰りなさい、沙織お姉様」そう声をかけた。
美音ちゃ〜ん!と満面の笑みで抱きついてくることを予想していたのに、突然子供のように大泣きされてしまったことは記憶に新しい。
どこまでも奥深い女性(ひと)なのだ。
奔放に生きているようでそうではない。それは母と通ずるものがある。

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