彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「美音、眠れなかったのか?」

俊佑さんの胸に顔を埋めたまま頷いた。

「永峰さんは大丈夫だ、安心しろ。美音にありがとうって伝えてくれって」

「もうしゃべれるの?」

「ああ、食事もとれるし、歩行訓練もする。一般病棟に移った後はリハビリだ」

「よかった」

顔を上げ、彼の顔を見つめた。

「俊佑さん、昭二おじさんを助けてくれて、ありがとうございます」

「美音もよく頑張ったな」

私の頭を撫でる大きな手が、背中に回され、優しく包み込むように抱きしめてくれた。


その後、昭二おじさんは驚異的な回復を見せ、三週間後には会社に戻ってきた。
けれど、手術で胸骨を切開しているため、所謂骨折のような状態だ。骨がくっつくまで重たいものを持ってはいけないし、転んで胸を打ってしまうのは論外だ。
社員全員、通常業務に加え、社長監視業務が加わった。でも、昭二おじさんがそこにいてくれるという安心感は否めない。

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