彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
がっちゃんのレッスンを終え朝戸家を出ると、俊佑さんが車で迎えに来てくれていた。
運転席から降りてくると、いつものように私をエスコートし助手席に座らせる。

「俊佑さん、いつも送り迎えありがとうございます」

「どういたしまして」

「そういえば、今日は花火大会でしたね。梨花さんが教えてくれるまですっかり忘れていました。がっちゃんを連れて家族で見に行くそうです。

「美音も見たいか?」

「はい!」

「了解」

俊佑さんが車をゆっくりと発進させた。
マンションに帰ると思いきや、車はマンションを通り越していく。

「どこか行くところがあるんですか?」

「花火、見るんだろう?」

「はい」

「俺がいい場所を知っている」

「そうなんですか⁉︎ うわぁ、とこだろう」

ワクワクしながら助手席に座っていると、車はホテルデュスイートべりが丘の車寄せに停車した。

ドアマンがドアを開け、降りるように促してくれる。
俊佑さんも車を降り、ドアマンに車を預けると、私の手を取りエントランスを抜けた。

「俊佑さん、これはいったい……」

彼は微笑むだけで何も答えてはくれない。
フロントに声をかけることもなくエレベーターに乗った。最上階で降りるとそこはクラブフロアだった。

「お帰りなさいませ」

コンシェルジュだろうか、私たちに向かって丁寧に頭を下げた。

「お疲れさま」

俊佑さんが声をかけ、私は彼に手を繋がれたままお辞儀をした。

高級絨毯が敷かれた通路を歩いて行く。
ある部屋の前で立ち止まりドアを開けた。
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