彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
私は沙織さんに導かれ、皆が待つチャペルのある屋外へ歩んだ。

晴れ渡る青空。
鳥の囀りと、風に揺れる新緑の木々の葉が、まるで音楽を奏でているようだ。

私は空を見上げ、心の中で呼びかけた。

『お父さん、もすぐ式が始まるよ。そろそろこっちに来てね』

俊佑さんが待つ十字架の祭壇に向かって、真紅のバージンロードが伸びている。
祭壇の横にはピアノがあり、ピアノ椅子に座る母が、私に向かって頷いた。

心地よい穏やかな風が私を包み、静寂に満ちた空気がチャペル全体に広がった。
父が隣に立ち、腕を組む仕草をしてくれているかのように思えた。
私は腕を回し、斜め上を見上げる。父が笑ってくれているようだ。

私はしっかりと前を見据えた。

母の奏でるピアノの音色が、神聖な空気の中響き渡る。

" メンデルスゾーン作曲 結婚行進曲 "

母の想いがこの曲に込められている。
私は、一歩、また一歩とバージンロードを進む。

曲の終わりと同時に私も俊佑さんのもとで立ち止まった。
白のタキシードを完璧に着こなし佇む彼は、完全なる王子様だ。

父の腕から離れ、俊佑さんの手を取る。 
俊佑さんは、目には見えない父に向かって頭を下げた。何か心で会話しているようだった。


私たちは向かい合い、微笑んだ。
そして誓う。

互いに愛しみ、感謝し合い、寄り添いながら生きていく。

私は彼の手を離さない。
命が尽きるその時まで、私は俊佑さんを愛し続ける。

私たちが出会い、恋をしたこの街で、この先もずっと、ふたりの恋物語を紡ぎ続ける。


                       Fine
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