彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「俺が借金まみれで女たらしのとんでもクズ男だったらどうするつもりですか?」

「そんなにとんでもない人なんですか?」

「さぁ、どうだろう。でも、何もかもすっ飛ばして結婚って、貴女の方がとんでもないかな」

「ダメ、ですか? 私、耐えられないって思ったんです。ずっと貴方に憧れていました。そんな貴方に抱き止められて、心配されて、柔らかい表情を向けられて、想いを秘めているだけなんて苦しすぎます!それに、貴方が他の女性と、その、あの、そういう関係になってしまうのは辛いです。とにかく、耐えられません! でも……」

「でも?」

「私、家事は一切できません。苦手なんです」

あまりにも唐突なプロポーズと、家事不得手宣言に押され気味の父だったが、突然肩を揺らし笑い始めた。

「いいでしょう。しましょうか、結婚」

「え⁉︎ いいんですか?」

「人生最大の賭をしたくなったんですよ」

「その賭、損はさせません」

「俺、明日休みなんで婚姻届貰ってきます」

「私も休みなので一緒に行きます!」

「初デートが役所か」

「はい!」

「俺たち、ホント、とんでもねぇな」

「はい!」

父28歳、母27歳だった。


信じられないだろうが、これが私の両親だ。
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