彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「美音ちゃん、どうだい? 働いてみないか?」

もちろん断る理由などない。

「いいんですか?」

「いいも何も、仁と玲ちゃんの娘だ。大歓迎だよ。それに、美音ちゃんが頑張り屋さんなのは知っているからね」

母に目配せすると、笑顔で頷いた。

「是非、働かせてください!」

「よしっ!履歴書はすぐに用意できるかい?」

「出来ます」

「じゃあ、明日11時、履歴書を待って事務所においで。一応入社試験は受けてもらうよ。試験って言っても、面接という名の顔合わせだけどな」

「はい!」

「昭二さん、美音のこと、よろしくお願いします」

「あぁ、ビシビシしごいてやるから覚悟しろよ。おっと、しごいてやるなんて言っちまったが許せ仁」

「私頑張ります!応援してね、お父さん」

母が墓石を優しく撫で、

「仁くん、美音、社会人になるのよ。あっという間ね」

柔らかい眼差しを向ける。

同時に秋の心地よい風が、ふわりと私たちを包み吹き抜けていった。
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