彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「相変わらず騒々しいでしょ」

「変わらずお元気そうで、底抜けに明るい感じも、とても懐かしいです」

「うふふっ、お母さん、美音ちゃんに会えるって、朝からソワソワしてたのよ」

「そうなんですね、凄く嬉しいです」

「さっ、首を長〜くして待ってる人がいるから、行きましょうかねぇ」

梨香さんに連れられ、奥の応接室へと通された。

社長である昭二おじさんの横に、日焼けした目鼻立ちのはっきりした端正な顔立ちの男性が腰掛けている。
鋭い視線に少々萎縮してしまった。

「美音ちゃん、さぁ、座りなさい」

昭二おじさんに促され「失礼します」と向かい側のソファーに腰を下ろした。

「あぁ、そうそう、紹介しておくね。専務の雅志だ。梨香の旦那だよ」

「桃園美音と申します。よろしくお願いいたします」

「専務の朝戸雅志(あさどまさし)です。こちらこそ、よろしくお願いします」

鋭い視線からは想像できない穏やかな話し口調だ。
きっと、厳しさと優しさを兼ね備えた人なのだろう。

「美音ちゃん、後で社内を見て回りなさい、梨香に案内させるから。みんながどんな仕事をしているのか見ていくといい。特に美音ちゃんが携わる仕事はしっかりと見ておいた方がいいからね。それから履歴書は梨香に渡しておいてくれ」

「はい」
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