彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
え⁉︎
一生をかけて幸せ⁉︎
何を言っているの⁉︎

「造言ではなかったということか」

「もちろんです」

呆気に取られ言葉が出ない。
腰に回された彼の腕は私から離れることはなく、それどころか、余計に力が入っているように感じる。

「それでは失礼します。美音、行こうか」

言葉を失ったまま、引き攣った笑顔で会釈した。

腰に回した腕はそのままに、彼は爽やかな笑顔を残すと、踵を返しその場を離れた。
二人で "Private" のドアを抜け、バックヤードの通路でようやく立ち止まる。
彼の一連の行動に呆気に取られていた私だが、ハッと我に返り慌てて彼の手を解くと、一歩後ろに距離をとった。

「な、何を! い、いったいさっきのあれはなんなんですか!」

彼の人差し指が私の唇に添えられる。

「あまり大きな声を出すと人が来てしまう」

意味深な笑みを浮かべた。

「じゃあ、自己紹介からだな」

ダークブラウンのクラッシックスーツを着こなした180センチ以上はあるであろう長身の彼が、私を見据え姿勢を正した。
非の打ち所のない面貌に思わず息を呑む。

「俺は 高椿俊佑(たかつばきしゅんすけ)、ベリが丘総合病院の心臓血管外科医です」



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