彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
梨香さんに連れられやって来たのは総務部だ。男性2名女性7名が忙しなく動いている。20代から50代の年齢層ではないだろうか。
皆、胸元に『永峰電気工事店』と刺繍が入った紺色の作業着に、下はスラックス、タイトスカート、作業パンツと様々だ。
梨香さんに促され私が挨拶をすると、笑顔で迎えてくれた。
電話の本数が多く、皆の手が取られるため、簡単な挨拶で終わってしまった。
「電話が鳴りっぱなしですね」
「もうすぐイルミネーションの季節だから、その問い合わせが殆ど。有難いことに、うちの仕事を評価してくれるお客様が紹介してくれているみたい」
「真摯な仕事ぶりが評価されてるんですね」
「そうね、それがうちの基本理念だから」
「足を引っ張らないようにしなきゃ」
「うふふっ、美音ちゃん、気負わない気負わない」
「はい」
「じゃあ、移動しようか」
次は設計施工管理部の見学だった。インテリ系雰囲気の男性社員10名がパソコンに向かっている。総務部とは全く違った緊張を纏った空気だ。でも、挨拶を返してくれる時は、とても柔らかい空気になった。
部屋を出て「総務部とは雰囲気が全く違いますね」梨香さんに話しかけると、
「そうよね、お腹が鳴ると響き渡っちゃう」
まさにそれだ。この部署に放り込まれたら、私は緊張のあまり石になってまうかもしれない。
仕事の邪魔をしないよう早々と立ち去った。
その足で向かったのは、車庫に繋がる作業場だ。工具箱が整理整頓され並んでいる。人の姿はない。
「あら、みんな現場に出てるのね。仕方ない、顔合わせはまた今度ね」
工具箱を前に、私の脳裏には父の姿が浮かんでいた。
仕事中の父を何度か見たことがある。母が一目惚れするのがわかるほどかっこよかった。
仕事内容は父とは異なるけれど、自分もこれからこの仕事に携わるのだと思うと、なんとなく、作業着姿で仕事を教わる自分の姿が想像できた。
皆、胸元に『永峰電気工事店』と刺繍が入った紺色の作業着に、下はスラックス、タイトスカート、作業パンツと様々だ。
梨香さんに促され私が挨拶をすると、笑顔で迎えてくれた。
電話の本数が多く、皆の手が取られるため、簡単な挨拶で終わってしまった。
「電話が鳴りっぱなしですね」
「もうすぐイルミネーションの季節だから、その問い合わせが殆ど。有難いことに、うちの仕事を評価してくれるお客様が紹介してくれているみたい」
「真摯な仕事ぶりが評価されてるんですね」
「そうね、それがうちの基本理念だから」
「足を引っ張らないようにしなきゃ」
「うふふっ、美音ちゃん、気負わない気負わない」
「はい」
「じゃあ、移動しようか」
次は設計施工管理部の見学だった。インテリ系雰囲気の男性社員10名がパソコンに向かっている。総務部とは全く違った緊張を纏った空気だ。でも、挨拶を返してくれる時は、とても柔らかい空気になった。
部屋を出て「総務部とは雰囲気が全く違いますね」梨香さんに話しかけると、
「そうよね、お腹が鳴ると響き渡っちゃう」
まさにそれだ。この部署に放り込まれたら、私は緊張のあまり石になってまうかもしれない。
仕事の邪魔をしないよう早々と立ち去った。
その足で向かったのは、車庫に繋がる作業場だ。工具箱が整理整頓され並んでいる。人の姿はない。
「あら、みんな現場に出てるのね。仕方ない、顔合わせはまた今度ね」
工具箱を前に、私の脳裏には父の姿が浮かんでいた。
仕事中の父を何度か見たことがある。母が一目惚れするのがわかるほどかっこよかった。
仕事内容は父とは異なるけれど、自分もこれからこの仕事に携わるのだと思うと、なんとなく、作業着姿で仕事を教わる自分の姿が想像できた。