彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
無事卒業を迎え、私は晴れて永峰電気工事店の社員となり、総務部経理課に配属された。直接仕事を教えてくれるのは入社5年目の女性社員、眞壁(まかべ)さんだ。
彼女は高卒なので私と同い年。かしこまっている私に、同い年なのだから、もっとフランクで構わないと言ってくれたのだが、さすがにそれは無理だと丁重にお断りした。5年も先輩にフランクに接することなどできるはずがない。けれど、彼女も引き下がらない。
できることならプライベートな時間は同年として接してほしいと懇願された。そこまで言われれば断れない。了承すると、眞壁さんは満面の笑みを浮かべ、私の手を握りしめた。少々面食らったが、新人の私に気を遣ってくれたのかもしれないと、心がじわりと熱くなるのを感じた。

お腹の大きくなった梨香さんは一週間後に産休に入る。
お昼休み、眞壁さんと近くの神社に参拝に訪れた。
今から安産祈願に行ってくると話す眞壁さんに、私も連れて行って欲しいとお願いすると、想像以上に喜んでくれた。
男の子だと聞いていたので、淡いブールーのお守りを一緒に選んだ。
梨香さんに渡すと、

「こんなに思われて、私もこの子も幸せ者だわ」

思いっきり抱きつかれた。これまた想像以上の喜びようだった。

幸せを裾分けしてもらったようで、自然に笑みが溢れた。
< 34 / 151 >

この作品をシェア

pagetop