彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
パーティー当日
沙織さんから指示された通り、11時にホテルに到着した。食事をとるよう言われていたので、そのままカフェに向かい、私のために用意してくれていた昼食をいただいた。
その後、指慣らしのためにバーラウンジのピアノを引かせてもらい、練習を終えるとホテルのサロンへ向かった。沙織さんがプレゼントしてくれた衣装に着替え、髪を整えてもらいメイクを施してもらった。
スタッフに促され、大鏡の前に立つ。

自分じゃないみたい……

鏡に映った自分に、またも見惚れてしまった。そこへタイミングよく沙織さんが姿を見せ、満面の笑みを浮かべた。

「まぁ!凄く似合ってる!お姫様みたい」

沙織さんのオーバーリアクションに恥ずかしさが増す。

「美音ちゃん、調子はどう? ドレスは?靴は?サイズは大丈夫?」

「はい、大丈夫です。こんなに高価で素敵なものを、本当にありがとうございます」

「もう、いいのよぉ〜 。ため息が出るくらい似合ってる。店長が言っていたように、美音ちゃんのためにあつらえたもののようだわ。ドレスも本望ね」

「それは褒めすぎかと……」

「私は事実を言っているまでよ。美音ちゃん、祖父と父が到着したみたいだから、ちょっと顔見せに行きましょうか」

「え⁉︎ は、はい……」

高椿の会長と社長に会いに行くなんて、心臓が口から飛び出そうだ。

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