彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「はい、ER 神崎です」

「姉さん?俺」

「俊佑! どうしたの?」

「今から患者さんを連れて行くから、処置室空けといてくれないか」

「はい⁉︎」

「頼んだよ」

「ちょ、ちょっと待って!連れてくるのはわかったけど、あなた今日日本を発つんでしょ?時間は大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。空港までの移動時間を考えても、出発時刻までかなり余裕をみていたから」

「わかったわ」


待たせておいた車の後部座席に彼女を抱えたまま乗り込み、ベリが総合病院へ向かった。

病院に到着するまでの間、朦朧としている彼女の頭を膝に乗せ、呼びかけたが反応はなかった。

頬には涙の跡がある。その涙の跡をそっと指で触れた。

「何があったんだ……」

幸せに過ごしている。そう思っていたのに……
目の前の彼女の心は、声をあげて泣いているようだった。

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