彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
それでも俺は、どう行動するのがベストなのか結論を出せないまま当日を迎え、ホテルまでやって来た。
エントランスを抜けると、ピアノの音色が俺を包んだ。
20年前のあの日も流れていた曲だ。
ロビーラウンジの隅に移動し、ピアノを弾く彼女を見守った。
シャンデリアも、イルミネーションも、グランドピアノも、この空間全てが彼女のために用意された舞台のようだ。
美しく輝く彼女に見惚れていると、彼女に向けられるもう一つの視線に気がついた。
クラッシックな服装ではない。ビジネスマンか?
爽やかな好青年という印象だ。このホテルの宿泊者だろうか。
だが、その視線に俺はただならぬものを感じてしまった。野生の感、とでも言おうか。
彼は一歩も動かず、視線は彼女をとらえたままだ。
もしかして、曲が終わるのを待っているのか?
俺の心の中のマグマが音をたてて活動を始めた。
曲が終わり、彼女が椅子から立ち上がった。
同時に男も足を踏み出す。
俺は咄嗟に彼女の元へ駆け寄った。そして、彼女の腰に腕を回し自分の身体に引き寄せた。
彼女の驚いた表情に微笑みながら声を落とす。
「元気そうで何より」
「え?」
彼女の瞬く表情が可愛すぎて、自分自身にも理解できない何かのスイッチを押してしまった。
「恩を返してもらおうかな」
それからの俺は、別の誰かが乗り移ったかのように、強引な男となって彼女を囲い込んでいったのだった。
エントランスを抜けると、ピアノの音色が俺を包んだ。
20年前のあの日も流れていた曲だ。
ロビーラウンジの隅に移動し、ピアノを弾く彼女を見守った。
シャンデリアも、イルミネーションも、グランドピアノも、この空間全てが彼女のために用意された舞台のようだ。
美しく輝く彼女に見惚れていると、彼女に向けられるもう一つの視線に気がついた。
クラッシックな服装ではない。ビジネスマンか?
爽やかな好青年という印象だ。このホテルの宿泊者だろうか。
だが、その視線に俺はただならぬものを感じてしまった。野生の感、とでも言おうか。
彼は一歩も動かず、視線は彼女をとらえたままだ。
もしかして、曲が終わるのを待っているのか?
俺の心の中のマグマが音をたてて活動を始めた。
曲が終わり、彼女が椅子から立ち上がった。
同時に男も足を踏み出す。
俺は咄嗟に彼女の元へ駆け寄った。そして、彼女の腰に腕を回し自分の身体に引き寄せた。
彼女の驚いた表情に微笑みながら声を落とす。
「元気そうで何より」
「え?」
彼女の瞬く表情が可愛すぎて、自分自身にも理解できない何かのスイッチを押してしまった。
「恩を返してもらおうかな」
それからの俺は、別の誰かが乗り移ったかのように、強引な男となって彼女を囲い込んでいったのだった。