彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
ご対面
◇◇◇◇◇

「俺は高椿俊佑、ベリが丘総合病院の心臓血管外科医です」

爽やかに自己紹介され、眩いほどの笑顔を向けられた。

突然目の前に現れた美しい男性。
この人が俊佑さん……
沙織さんや季織先生とは違った美しさだ。
二人がエレガントなら、彼は "クール" だろうか。
思わず見惚れてしまった。

いやいや見惚れている場合ではない。

「あのっ、その節は助けていただきありがとうございました」

「どういたしまして」

「でも、さっきのあれは何ですか? 一生をかけて幸せにしたいって、何故あんな嘘を?」

「嘘?俺、嘘はつかない主義なんだけど」

「嘘はつかないって、高椿先生と私は初対面に等しいですよね?」

「初対面なんかじゃないんだけどな」

「えっ? どこかでお会いしましたか?」

「ずっと前にこのホテルで会っているよ」

記憶を遡ってみたが思い当たらない。

「申し訳ありません、心当たりがないのですが、いつのことでしょうか?」

「覚えていないのも無理はないよ。20年前のことだから」

「20年⁉︎」

思わず素っ頓狂な声を発してしまった。

「ツインテールの可愛い女の子だったよ。お父さんかな、一緒に手を繋いでピアノを聴いていたね」

「どうしてそのことを?」

「知っているのかって?」

私は息を呑んで頷いた。
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