彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った。

ここはどこだろう。

視線を動かした。

私に背を向け、パソコンのモニターに向かう白衣姿の女性がいる。
私がゆっくりと体を起こすと、気配を感じたのか女性が振り返った。

あまりにもエレガントな美しさに思わず息を呑む。

「気分はどうですか?」

「だいぶ良くなりました」

「目眩と音の症状は?」

「えっ⁉︎ どうしてその事を?」

「申し訳ありませんが、バッグの中身を拝見しました。学生証と当院の診察券をお持ちでしたので、カルテを確認させてもらいました。私は医師のカンザキと申します」

女医の胸元には
『ベリが丘総合病院 医師 神崎季織 K.Kanzaki』
と印字されたネームタグがある。

ベリが丘総合病院は、特定機能病院の最高峰と位置付けされている。高度な先端医療の提供に留まらず、開発や研究を実施する能力を備えている施設だ。世界的に有名なドクターチームも存在し、優秀な医師の宝庫としても知られている。
彼女も勿論その一人なのだろう。
天は二物を与えずというが、二物も三物も与えていると思う。

「音の違和感は治まりましたが、少しだけ目眩はします」

「では、今から点滴をします。少し貧血もあるようですね。明日、朝一で主治医が診察するとのことですので、できれば、点滴が終わっても今日はこのままここで休んでください。もう夜も遅いですし」

「わかりました」

「桃園さん、横になりましょうか。点滴をしましょう」

「はい」

横になろうとする私を、スッと椅子から立ち上がり支えてくれた。

背、高い!

私の腕に点滴の針を刺す手も、指が長く、その容姿はまるでモデルだ。

「私はこれから救急外来の診察がありますのでここを離れますが、何かありましたらナースコールしてください」

「あ、あのっ」

「どうされました?」

私には確認しなければならないことがある。
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