彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
私は俊佑さんに連れられ、招待客に軽く挨拶をして回る。それは同時に、桃園美音が高椿俊佑の婚約者だと周知して回っているようなものだった。
パーティーの終盤に駆け込んできた季織先生にも私たちのことはすぐに伝わった。
おめでとうと声をかけてくれた季織先生に手を繋がれていた男の子が、私の前に立つと自己紹介をしてくれた。
「こんにちは、神崎ゆうやです。漢字で優しい也って書きます。6歳です。チヌークが好きです」
チヌーク?
「優也、チヌークって言っても美音ちゃんはわからないと思うわよ」
「チヌークはね、大型輸送用ヘリコプターだよ。災害救助には欠かせないんだ。たくさんの物資を一気に運べるんだよ。凄くカッコイイんだぁ。僕、ブルーインパルスも好きだけど、でもやっぱりチヌークが好き」
「この前、航空祭でブルーインパルスは飛んでたよね」
「うん!僕、お父さんに基地まで連れて行ってもらったよ。チヌークも展示されてて中に入らせてもらったんだぁ。凄く嬉しかった」
「優也君はどうしてチヌークが好きなの?」
「困っている人を助けに行くから。僕、チヌークのパイロットになりたいんだぁ」
「優也くんは名前の通り優しいね。パイロットになってたくさんの人を助けてあげてね。もし、私が災害に遭って困っていたら助けてくれる?」
「うん!僕が助けてあげる」
「ありがとう」
6歳児とは思えない受け答え、さすが季織先生の息子さんだ。瞳を輝かせ未来を語る姿がとても眩しかった。