彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「沙織さんに聞いたの?」
母はゆっくりと頷いた。
「あなたを助けた俊佑さんが、何故、あなたに何も告げず、その場を去ったと思う?」
私は首を横に振るしかできない。
「弱っているあなたにつけ入りたくなかってんですって」
「えっ?」
「美音、あなたは俊佑さんの初恋の相手だった。辛い事があったのか、悲しい事があったのか、涙を流した意識のない初恋の相手が目の前にいる。季織先生が、今想いを伝えれば、確実に自分の存在が生まれるのよって俊佑さんに言ったそうなの。でも、俊佑さんは首を縦には振らなかった。そして、あなたのことを季織先生に託し、想いを心に秘めたままアメリカに渡ったのよ。美音、あなたのことが大切だから、弱みに漬け込むような真似はしたくなかったっていうことよね」
"私が彼の初恋" それは本当だった。
しかも、私のことを私の知らないところで大切に想ってくれていた。
『嘘はつかない主義なんだけど』
その言葉は真実で、私に対して初めから真摯に向き合ってくれていた。
今まで抱いたことのない感情が急速に熱を帯び、全身に広がっていく。
「お母さん、私……」
「恋、してみたら? 」
ズタズタにされた過去の苦い想いがブレーキをかける。でも、そのブレーキは効きそうにない。
私の腰を抱く彼の腕の温もりが鮮明によみがえった。
そうか……
私はもう、彼に恋をしてしまっているのかもしれない。
母はゆっくりと頷いた。
「あなたを助けた俊佑さんが、何故、あなたに何も告げず、その場を去ったと思う?」
私は首を横に振るしかできない。
「弱っているあなたにつけ入りたくなかってんですって」
「えっ?」
「美音、あなたは俊佑さんの初恋の相手だった。辛い事があったのか、悲しい事があったのか、涙を流した意識のない初恋の相手が目の前にいる。季織先生が、今想いを伝えれば、確実に自分の存在が生まれるのよって俊佑さんに言ったそうなの。でも、俊佑さんは首を縦には振らなかった。そして、あなたのことを季織先生に託し、想いを心に秘めたままアメリカに渡ったのよ。美音、あなたのことが大切だから、弱みに漬け込むような真似はしたくなかったっていうことよね」
"私が彼の初恋" それは本当だった。
しかも、私のことを私の知らないところで大切に想ってくれていた。
『嘘はつかない主義なんだけど』
その言葉は真実で、私に対して初めから真摯に向き合ってくれていた。
今まで抱いたことのない感情が急速に熱を帯び、全身に広がっていく。
「お母さん、私……」
「恋、してみたら? 」
ズタズタにされた過去の苦い想いがブレーキをかける。でも、そのブレーキは効きそうにない。
私の腰を抱く彼の腕の温もりが鮮明によみがえった。
そうか……
私はもう、彼に恋をしてしまっているのかもしれない。