藤崎くんの、『赤』が知りたい。
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「──それじゃあ、平等にクジ引きで決めるからな。もう文句はなしだぞ」
担任の鈴田先生の、不機嫌そうな声が教室中にひびいた。
先生はお手製のクジ引きボックスを、無造作にガサガサとかき回していく。
中学生になって、二度目の体育祭がはじまろうとしていた。
杉野丘中学校の体育祭は、毎年生徒だけじゃなく、先生や保護者の人達も盛り上がる一大イベントだ。
クラスのみんなもそれぞれに出場する種目を決めて、あとは本番に向けて練習に励むだけとなった今。
ただ、何度話し合ってもクラスTシャツと横断幕を作る係だけが決まらず、最終的にクジ引きで決められることになってしまった。
「(どうか、選ばれませんように)」
心の中で、私は何度も唱えた。
運動は得意だけれど、こういう行事ごとはあまり好きじゃない。
一致団結だとか、みんなで力を合わせてだとか、私はいつだってそういったものの中に入ることができないから。
それはたぶん、小学校四年生のときの……あのできごとのせい。
中学生になったからといって、ほとんどが顔見知りばかり。
今でこそみんなは何も口に出さないけれど、「蓮見楓花(はすみ ふうか)」という私の名前を聞けば、きっと、次に出てくる言葉は「あぁ、小四のときのあの人だよね」って言うんだ。
だから高校は私のことなんて誰も知らない、うんと遠いところに通う。
今はそんな小さな夢だけが、私の希望になっていた。
「よし、じゃあ発表するからな」
「どうか俺じゃありませんように!」
「あたしだってこれから部活と体育祭の練習もあって超多忙になるから無理だよ!」
クラスTシャツを作る担当が四人。
横断幕を作る係が三人。
生徒の名前が一人ずつ書かれた七枚の用紙が、クジ引きボックスの中から取り出されていく。
私の名前がありませんように。あの中に入っていませんように。
鈴田先生が一つずつ用紙をめくっていくたびに、強く強くそう願った。
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