陽之木くんは、いつもそうだ。
 確かに本の背表紙には必ず下の方に三桁、一桁の数字とカタカナが書かれている。
 送られてきた数字やカナはでたらめな羅列ではなく、一冊の本を示していたんだ。

「えっと、798.3のマだからー……」

 村山さんは迷いなく文学のコーナーへ向かい、その中の児童書・絵本コーナーで足を止めて指で数字をたどる。

「……あ、あった。 これかしら」

 それは大判のカラフルな絵本だった。
 表紙には、たくさんの人が入り乱れる真ん中で可愛らしい少年が手を振る姿が描かれている。

『Where is Harry ?』。

 私は村山さんから差し出されたそれを信じられない気持ちで受け取って、声が出せなくなった。
 だってこれは、この本は、陽之木くんと私が知り合うきっかけになった本だったから。


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