陽之木くんは、いつもそうだ。
 依田くんは言いながら陽之木くんと同じ、綺麗なフォームでボールを投下すると、それはまたしてもガーターに落ちた。

「……そうなんだ」

 依田くんには教えてあげてたんだ。

「茅野先輩は教えてもらわなかったんすか」

 胸がざわりと気持ち悪くなる。

「……うん」

 不服のこもった相槌が漏れてしまって、私はハッとした。
 違う。
 私は卒業したはずだ。
 高校からも、陽之木くんからも、卒業したはずだ。
 それなのに、どうしてまた心を乱されているんだ。
 どうして特別でもなんでもない私が、こんなところで陽乃木くんのことを考えているんだ。
 陽乃木くんは、もういないのに。

「それ翔先輩は多分、」
「あの」

 依田くんの言葉を遮った私に、依田くんは振り返る。

「絵本のマステとか、メッセージとか送ったのって君? お兄さん?」

 私を見る依田くんの目は相変わらず鋭く強くて気圧される。 それでも私は負けじと続ける。

「どうしてこんなことしてるのかわかんないけど、もういいかな」

 これ以上ここにいたら、壊れる。 おかしくなる。

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