陽之木くんは、いつもそうだ。
 その数日後。 卒業式は予定通り執り行われた。

「卒業生、入場!」

 学年主任の先生の声を合図に威風堂々が流れ始める。
 前の方で陽之木くんの遺影を持ったバスケ部の卒業生が入場すると、会場からひときわ大きな拍手が響いた。 先生たちや保護者達が泣いているのが見えて、私はなぜか居心地の悪さを覚えた。
 制服の胸ポケットに花をつけ、在校生たちの間に作られた花道を前の人に続いて淡々と歩いていくと、囁き声が聞こえてくる。

「マリナ先輩今日来てないらしいよ」
「陽之木先輩、最期の日も昼休み茅野先輩といたんだって」
「えー……意味わかんない。 ほんと図々しい、最低」

 明らかな悪意が、私の足跡を辿るようにして纏わりついてくる。 それでも、別になんとも思わなかった。 全部全部、今日で最後だから。 陽之木くんと私の名前のない関係からくるいろんなストレスから、ようやく今日、卒業できるのだ。

「うるせーな」

 少し前方からした男の子の声で、ヒソヒソ話す声がひとつ残らず止んだ。
 押し黙る生徒たちに、オレンジ髪の男の子は振り返って鋭い視線と尖った声をぶつける。

「図々しいのはお前らだろ。 黙っとけボケ」

 その男の子に見覚えがあった。
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