星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「荷物は宅配で送ってもらいましょう」
彼はサービスカウンターで宅配の手続きをした。着替えた服も一緒に送るように手続きしていた。一番邪魔そうなハープは背負ったままだった。
それだけ大切なんだろう、と詩季は彼のうしろ姿を眺める。
なのに弾けないなんて、苦しいだろう。
好きだからこそ、きっと余計に苦しい。
それは詩季にもわかる。
なぜなら自分も苦しいから。
服が好きで勤めているのに、迷路にいるみたいにぐるぐるして、苦しくてたまらない。
好きなのに、どうして。
答えは届くようで届かない。
あれやこれやと考えて答えのようなものが見つかっても、納得できるようでできない。
送り状の控えを渡された絃斗は振り返ってにっこり笑い、お待たせ、と言った。
「コーヒーありがとう」
「お礼が出来て良かったです」
彼はまた満足そうに微笑んだ。
これで、連絡先を交換する必要はなくなってしまった。
それをさみしく思う自分に気が付いて、詩季は少なからず驚いた。
どうして。彼とは会ったばかりで他人なのに。
思わず彼を見る。
隣で歩く彼はにこにこしているだけで、そこから彼の気持ちはなにも読み取れない。
地上に向かってエスカレーターに乗り、前に立つ絃斗がふと笑った。
「デートしてるみたいですね」
無邪気に言われて、またどきっとした。彼のまわりだけ空気が輝いているかのようだった。笑みで細くなった目が詩季を見ている。
「デートじゃないよ」
そんなの、初恋の彼女が気を悪くしてしまう。
「そう……かな」
急に絃斗は勢いをなくした。微笑の名残が口元に残っていたが、目は行く先をなくしたように階段状になった床をさまよう。
どうせ二度と会うことはないんだから気にする必要なかったかな。
でもやっぱり自分が彼女の立場なら、知らない女と二人で出掛けてるなんて嫌だ。
「コーヒー、詳しいのね」
詩季は気まずい気持ちで話しを変えた。
「料理はさせてもらえなかったけど、コーヒーは何も言われなかったから凝ってしまって」
彼は照れ笑いを見せた。はにかんだその笑顔はかわいかった。
「イベントやってるって言ってましたよね。行ってみましょう」
地上に出ると、外は眩しい陽光で満たされていた。
彼はサービスカウンターで宅配の手続きをした。着替えた服も一緒に送るように手続きしていた。一番邪魔そうなハープは背負ったままだった。
それだけ大切なんだろう、と詩季は彼のうしろ姿を眺める。
なのに弾けないなんて、苦しいだろう。
好きだからこそ、きっと余計に苦しい。
それは詩季にもわかる。
なぜなら自分も苦しいから。
服が好きで勤めているのに、迷路にいるみたいにぐるぐるして、苦しくてたまらない。
好きなのに、どうして。
答えは届くようで届かない。
あれやこれやと考えて答えのようなものが見つかっても、納得できるようでできない。
送り状の控えを渡された絃斗は振り返ってにっこり笑い、お待たせ、と言った。
「コーヒーありがとう」
「お礼が出来て良かったです」
彼はまた満足そうに微笑んだ。
これで、連絡先を交換する必要はなくなってしまった。
それをさみしく思う自分に気が付いて、詩季は少なからず驚いた。
どうして。彼とは会ったばかりで他人なのに。
思わず彼を見る。
隣で歩く彼はにこにこしているだけで、そこから彼の気持ちはなにも読み取れない。
地上に向かってエスカレーターに乗り、前に立つ絃斗がふと笑った。
「デートしてるみたいですね」
無邪気に言われて、またどきっとした。彼のまわりだけ空気が輝いているかのようだった。笑みで細くなった目が詩季を見ている。
「デートじゃないよ」
そんなの、初恋の彼女が気を悪くしてしまう。
「そう……かな」
急に絃斗は勢いをなくした。微笑の名残が口元に残っていたが、目は行く先をなくしたように階段状になった床をさまよう。
どうせ二度と会うことはないんだから気にする必要なかったかな。
でもやっぱり自分が彼女の立場なら、知らない女と二人で出掛けてるなんて嫌だ。
「コーヒー、詳しいのね」
詩季は気まずい気持ちで話しを変えた。
「料理はさせてもらえなかったけど、コーヒーは何も言われなかったから凝ってしまって」
彼は照れ笑いを見せた。はにかんだその笑顔はかわいかった。
「イベントやってるって言ってましたよね。行ってみましょう」
地上に出ると、外は眩しい陽光で満たされていた。