星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
青空の星
イベントが行われているのは駅の北側の噴水広場だった。二人が出会った場所だ。
フリーマーケットや屋台が並んでいたが、金曜日のせいか人は多くない。本番は土日なのだろう。
噴水は今日も水を出してはいなかった。
それを背に設置されたステージで、階段を観客席にしてカラオケ大会が行われていた。
お世辞にもうまいとは言えない歌声がスピーカーを通して流れていた。白いテントの下の審査員はパイプ椅子に座って頬杖をつき、退屈そうに歌を聞いている。
観客はまばらで、休憩のために座っているように見えた。
「カラオケ参加の方ですか? 待機場所はあちらです」
係員の若い女性に声をかけられ、詩季は戸惑って絃斗を見た。彼もまた戸惑い、首をふる。
「違いました? すみません、楽器をお持ちのようだったので」
女性は照れたようにごまかすように笑いを浮かべた。
「紛らわしくてすみません」
絃斗は軽く頭を下げた。背負ったハープのケースが一緒に揺れた。
「飛び入り参加OKなんです。お二人も歌っていかれませんか?」
女性の言葉に、詩季と絃斗は顔を見合わせた。
「カラオケリストに載っている歌ならなんでもOKですよ! 楽器持参の方は演奏での参加もできます」
「そういうのは……」
「参加します」
絃斗が言い掛けたのを詩季が遮って答える。
「ちょっと待って」
「ありがとうございます! 実は参加者が少なくて困ってたんです」
女性は嬉しそうに礼を述べた。
平日の昼間なら少なくて当然だろうな、と詩季は思った。どうして平日にやろうと思ったのか開催者に聞いてみたい。聞く機会はないだろうけど。
「こちらです、どうぞ」
女性に誘導されて、詩季は歩き出す。
「待って」
絃斗は困惑したまま、あとに続いた。