星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~



 絃斗の買ってくれたコーヒーセットは届いたらすぐに開封した。

 さっそく器具を洗って淹れてみた。
 フルーティーだった。香りは華やかで、甘やかだった。
 コーヒーにフルーティーさを感じる日がくるとは思いもしなかった。

「考えて見ればコーヒーも果実なんだよね」
 アカネ科のコーヒーノキに属している植物で、その果実の中の種を加工して作られたものがコーヒーだ。

「あの人が淹れたら、きっともっとおいしいんだろうな」
 絃斗を思い浮かべ、目を細めた。

 今頃はコンサートの準備で忙しくしているだろうか。
 困った顔でハープを抱えているだろうか。
 コーヒーを口にする。

 きっと、笑顔で弾いている。
 だってあのとき……一緒に舞台に立ったとき、彼は笑顔だったから。

 甘やかな苦みが広がり、ゆっくりと息をついた。
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