星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
星が歌うとき
コンサートの日まで、詩季はうきうきと過ごした。
彼の音楽を生で聞ける。しかも本人からの招待で。
それだけで、なんだか毎日が楽しくなった。
コンサートのドレスコードを調べたり、ハープについてスマホで調べたりした。
絃斗のコンサートは、ドレスコードは特にないようだった。
ハープについては、知らないことだらけだった。
小さなハープでも20万、グランドハープは100万や200万は当たり前だった。中には2000万を超えるものもあるという。電子式のハープもあるのが驚きだった。
バイオリンと同じく弦楽器である、と書いてあって驚いた。が、確かに弦が張られた楽器だ。弦をこすって音を出すバイオリンなどは擦弦楽器、絃をはじくハープは撥弦楽器である。
「そんなの気にしたことなかった」
詩季はつぶやいて、もっとスマホを見る。
ハープの弦は張りっぱなしだからその寿命は長くない。グランドハープでも60年ほどだ。
起源は狩人の弓だと言われており、もっとも古いハープの記録は紀元前4000年前のエジプトらしい。
ハープは楽器の女王と呼ばれることもある。が、楽器の女王、で検索したらピアノ、フルートやバイオリンも出てきて若干混乱した。結局、自分の中では楽器の女王はハープ、と詩季は決めた。
グランドハープは47本の弦があるのだが、材料に驚いた。
「弦って羊の腸でできてるの!?」
詩季は驚いてグランドハープの画像を見る。とうてい腸には見えなかった。
腸で作られた弦は合成繊維の弦よりもやわらかな音になるという。
グランドハープは下部にペダルがとりつけられており、両足を使って操作する。このペダルで♭もナチュラルも♯も表現できる。
オーケストラではピアノと並ぶ編入楽器だ。編入楽器とは、必要なときだけ参加する楽器のことである。
彼の演奏動画には、各国からコメントが寄せられていた。
どきどきしながら、彼のコンサートツアーの口コミも見てみた。
おおむね好評だった。
音が輝いてる。
ときめいた。
かっこいい!
そんなコメントを見るたびに、なんだか自分まで誇らしくなった。
玉川とかいう評論家がコンサートを酷評していた。親の七光り、心のこもらない演奏、などなど。
こいつが彼を追い込んだ犯人か、と腹が立ったが、結局、彼はネットで炎上して謝罪していた。