星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「二日目に泊めてもらったあの日、詩季さんが隣の部屋で寝てるって思ったら眠れませんでした。もっとずっと一緒にいたいって思いました」
 詩季は胸の奥がジンとした。

 彼もまた同じ気持ちでいてくれたのだ。
「また僕に朝食を作ってくれますか?」
 にこやかに言われて、詩季は顔を赤くしてうつむく。

「すごいこと言ってる自覚ある?」
 大人の関係になりたいとも、結婚の申し込みとも言える言葉だ。

「え、あ、そんなつもりは!」
 彼もまた顔を赤くした。

「だけど、そんなつもりがゼロってわけでもなくて……あの、なんていうか」
 彼は恥ずかしそうにもじもじして、詩季の手をぎゅっと握った。

 詩季はくすっと笑いをもらした。
 いい年した大人が二人して、なにを照れているんだろう。

「笑わないでください。僕だって勇気が必要だったんですよ。すごくどきどきしてるんですから」

「あんな大舞台をこなせるのに?」
「それとこれとは違います」
 詩季はまたくすっと笑った。

「作るわ、何度でも。あなたのために」
「じゃあ僕は晩ごはんにハンバーグを作ります」

「たまねぎは私が切るわ」
「子供あつかいして。ちゃんと自分で切るから」
 絃斗は口をとがらせた。

「手を切らないでよ?」
「あなたが見張ってくれるでしょう?」
「いいわよ。コーヒーはあなたが淹れてね」
 絃斗はうれしそうににこっと笑った。
< 46 / 47 >

この作品をシェア

pagetop