星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「あああ、美味しいです! 幸せえー!」
「そうなの。それは良かったわ」
彼の笑顔に詩季は目を細めた。
お客様に満足する買い物をしてもらったときのような達成感があった。
ふと、気づいてしまう。男性とこんなゆったりした朝を迎えたことなどあっただろうか。
バイヤーだった元彼はいつも忙しくしていた。慌ただしくデートして急いで帰るか朝は目が覚めたらもういないか、どちらかだった。
なのに、見知らぬ彼とこんなふうに過ごす日が来るなんて。
改めて見るこの青年はかなり整った顔立ちをしていた。気弱にも見える優しそうな目はぱっちりしている。
ふわふわとパーマのかかった髪は茶色く明るめだが、重めに作られた前髪が彼の幼さとかわいらしさを強調しているように見えた。
体の線は全体的に細く、それもまた若さに拍車をかけ、25歳位に見えた。
「何歳なの?」
「32です」
「3つも上!? とてもそうは見えないけど」
「よく言われます」
彼ははにかんで答えた。褒めてないんだけどな、とは口にしなかった。若く見えてうらやましい、と少し妬ましくも思った。
コーヒーを一口飲む。
「これ、うちにあったやつよね? いつもよりおいしい」
「良かったです」
彼は晴れやかに笑った。
ドキッとした。美形が微笑むと破壊力がある、と思いながらまたコーヒーを口に含む。
「ワンドリップコーヒーでもひと手間かける違うんですよ」
「なにそれ?」
「カップにのせてドリップするコーヒーです。最初にお湯を入れて蒸らしてからお湯を注ぐんです。それだけで仕上がりが違うんですよ」
詩季はいつもはインスタントコーヒーだ。彼の言うワンドリップコーヒーはたまに気が向けば買って来る程度だ。本格的なコーヒーのセットはない。
「で、なんで家にいるの?」
たずねると、絃斗はぎくっとしたように身を震わせた。
「そうなの。それは良かったわ」
彼の笑顔に詩季は目を細めた。
お客様に満足する買い物をしてもらったときのような達成感があった。
ふと、気づいてしまう。男性とこんなゆったりした朝を迎えたことなどあっただろうか。
バイヤーだった元彼はいつも忙しくしていた。慌ただしくデートして急いで帰るか朝は目が覚めたらもういないか、どちらかだった。
なのに、見知らぬ彼とこんなふうに過ごす日が来るなんて。
改めて見るこの青年はかなり整った顔立ちをしていた。気弱にも見える優しそうな目はぱっちりしている。
ふわふわとパーマのかかった髪は茶色く明るめだが、重めに作られた前髪が彼の幼さとかわいらしさを強調しているように見えた。
体の線は全体的に細く、それもまた若さに拍車をかけ、25歳位に見えた。
「何歳なの?」
「32です」
「3つも上!? とてもそうは見えないけど」
「よく言われます」
彼ははにかんで答えた。褒めてないんだけどな、とは口にしなかった。若く見えてうらやましい、と少し妬ましくも思った。
コーヒーを一口飲む。
「これ、うちにあったやつよね? いつもよりおいしい」
「良かったです」
彼は晴れやかに笑った。
ドキッとした。美形が微笑むと破壊力がある、と思いながらまたコーヒーを口に含む。
「ワンドリップコーヒーでもひと手間かける違うんですよ」
「なにそれ?」
「カップにのせてドリップするコーヒーです。最初にお湯を入れて蒸らしてからお湯を注ぐんです。それだけで仕上がりが違うんですよ」
詩季はいつもはインスタントコーヒーだ。彼の言うワンドリップコーヒーはたまに気が向けば買って来る程度だ。本格的なコーヒーのセットはない。
「で、なんで家にいるの?」
たずねると、絃斗はぎくっとしたように身を震わせた。