あなたと普通でトクベツなこと。


 二回丁寧にお辞儀をし、カランカランと鈴を鳴らしてからお賽銭を投げ入れる。
 パン、パンと二回拍手してから心を込めて祈りを捧げる。


「(昨年も見守っていてくださってありがとうございました。もし願い事を聞き届けてくださるのなら、どうか明緋さんと会わせてください)」


 最後に深々と一礼し、参拝を終えようと顔を上げた、その時だ。


「えっ……」


 真横にいたのは見覚えのある赤髪だった。この人の多さの中でも一際目立っている。


「え、どうして……」

「!? 八重!?」

「あ、明緋さん……」


 まさか願い事をした直後に真横に現れるとは思っておらず、動揺が隠せない。


「マジか。本当に八重に会えるとは思ってなかった!」

「わたくしもです……」

「なあ八重、時間あるか?」

「え?」

「また二人で抜け出そうぜ!」


 屈託のない笑顔に胸がキュンとする。
 修学旅行の時にも感じたときめきが再びよみがえる。

――神様ったら、願いを叶えてくださるのが早すぎないかしら?

 神様からのギフトはあまりにも急速で突然だった。

 差し出された手を取り、SPたちの目を盗んで再び二人だけの逃避行に繰り出す。

 胸のときめきが押さえられなかった。


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