『特別な人』― ダーリン❦ダーリン ―
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「こんにちは。
私バーベキューは今回が初めてで何をしたらいいのか
要領が分からなくて……」
「あぁ、最近入られたのですか?」
「はい、準社員でこの春から」
「うちは何年か勤めれば採用テストがあって正社員登用の道があるし、
皆親切な人が多くて働きやすい職場ですよ」
「そうなんです、正社員になれる道があると聞いてこちらの会社に
入社することに決めました」
「早く正社員になれるといいですね」
「ありがとうございます。
まだまだ知らないことだらけで、経理部の人たちしか知らないですし、
何か困ったことがあればお聞きしてもいいでしょうか?」
「あぁ、もちろんいいですよ」
「じゃあ、もうしわけありませんがメルアド赤外線送信で
送っていただいても構いません?
私、赤外線の送信のしかたが今ひとつ分からなくて……」
「いいですよ……」
「ありがとうございます。うれしいです」
彼の側に知り合いが集ってきたところで、私は早々に引き上げた。
連絡がとれるようになったのだから、もう何も焦る必要なし……と
言いたいところだけど今回は今までとは違うからね~、ちょっと焦るわぁ~。
先日私が牧野さんに話していたように崖っぷちはほんとだから。
向阪くんは旦那さん狙いだもん。
絶対落とさなきゃ。
◇ ◇ ◇ ◇
島本にロックオンされているとも知らず一方その頃向阪は
呑気なものだった。
「向阪 、さっきの美女誰よ」
「えっと、誰だっけ? 忘れた。
さっき初めて会った、はじめましてさんだよ」
「なにぃ~、そんなわけあるかよ」
「いや、まじそうなンだって」
「それではじめましてさんと何してたんだ?」
「いやぁ、何も。最近入社してきたって言ってたわ。
分からないことがあったらまた教えてくださいって言われただけ」
「へぇ~、お前狙われてるんじゃねぇ」
「それはないだろ。俺には……」
「掛居 さんがいるもんな。気をつけろよ」
「考え過ぎだって」
彼女はあんなこと言ってたけど、おいおい社内外のことをいろいろ
知っていくうちに俺と花のことも誰かから耳打ちされるだろうし、
そしたらメールなんてのも来ないだろう。
しかし、男なら誰でもグラっときそうな美貌の女性だったな、と
向阪 は内心でそんなことを思った。
向阪は島本玲子に声を掛けられる直前までずっと掛居 花のことを
視線で追いかけていたというのにだ。
もちろん、花に悪い虫が付かないか心配で。
しかし皮肉なもので自分に悪い虫がマーキングしていったことには
とんと気がついていなかったのである。
「こんにちは。
私バーベキューは今回が初めてで何をしたらいいのか
要領が分からなくて……」
「あぁ、最近入られたのですか?」
「はい、準社員でこの春から」
「うちは何年か勤めれば採用テストがあって正社員登用の道があるし、
皆親切な人が多くて働きやすい職場ですよ」
「そうなんです、正社員になれる道があると聞いてこちらの会社に
入社することに決めました」
「早く正社員になれるといいですね」
「ありがとうございます。
まだまだ知らないことだらけで、経理部の人たちしか知らないですし、
何か困ったことがあればお聞きしてもいいでしょうか?」
「あぁ、もちろんいいですよ」
「じゃあ、もうしわけありませんがメルアド赤外線送信で
送っていただいても構いません?
私、赤外線の送信のしかたが今ひとつ分からなくて……」
「いいですよ……」
「ありがとうございます。うれしいです」
彼の側に知り合いが集ってきたところで、私は早々に引き上げた。
連絡がとれるようになったのだから、もう何も焦る必要なし……と
言いたいところだけど今回は今までとは違うからね~、ちょっと焦るわぁ~。
先日私が牧野さんに話していたように崖っぷちはほんとだから。
向阪くんは旦那さん狙いだもん。
絶対落とさなきゃ。
◇ ◇ ◇ ◇
島本にロックオンされているとも知らず一方その頃向阪は
呑気なものだった。
「向阪 、さっきの美女誰よ」
「えっと、誰だっけ? 忘れた。
さっき初めて会った、はじめましてさんだよ」
「なにぃ~、そんなわけあるかよ」
「いや、まじそうなンだって」
「それではじめましてさんと何してたんだ?」
「いやぁ、何も。最近入社してきたって言ってたわ。
分からないことがあったらまた教えてくださいって言われただけ」
「へぇ~、お前狙われてるんじゃねぇ」
「それはないだろ。俺には……」
「掛居 さんがいるもんな。気をつけろよ」
「考え過ぎだって」
彼女はあんなこと言ってたけど、おいおい社内外のことをいろいろ
知っていくうちに俺と花のことも誰かから耳打ちされるだろうし、
そしたらメールなんてのも来ないだろう。
しかし、男なら誰でもグラっときそうな美貌の女性だったな、と
向阪 は内心でそんなことを思った。
向阪は島本玲子に声を掛けられる直前までずっと掛居 花のことを
視線で追いかけていたというのにだ。
もちろん、花に悪い虫が付かないか心配で。
しかし皮肉なもので自分に悪い虫がマーキングしていったことには
とんと気がついていなかったのである。