どうか、決してほかの誰もこの可愛さに気づきませんように…
3.
これでいい。
ユカリを守れるなら、博士のひとりやふたりいなくなっても痛くない。
「ずいぶん熱心に拝んでたね」
「当たり前だろ」
「そうなんだ。じゃあ、そんなトモキには……」
ユカリが突如コートのポケットに手を突っ込み、モゾモゾと探り始めた。
「あった、あった。これ、トモキにあげる」
ユカリが俺の手に何かを握らせてきた。
くっそー。何で俺、手袋なんかしてきた?
まあ、仮に俺がしてなくても、ユカリはつけているから意味ないんだけど……それでもこの手袋1枚分の厚さが悔しいっ!
ユカリがにっこにこで、俺の手から自分の手を離した。
俺の手のひらに残っていたもの……
それは手作りのお守りだった。
「もしかして……ユカリが?」
「手芸屋さんでキット買って作ったから、簡単だったんだけどね。へへっ」
「刺繍も入ってんじゃん」
俺の名前と“合格”の文字は明らかに手刺繍だった。