どうか、決してほかの誰もこの可愛さに気づきませんように…

気合い充分な“合格”の次に、小さいのに形の整っている“トモキ”をゆっくりなぞった。


ふと……本当にふと……


このお守り袋の中に入っている紙が見たい。


そう思った。


いやいやいや、お守りの中身を開けて見るなんて……


でも、これは神社で授与してもらったお守りとは違うし?


中身は何なのか聞いて知っているんだし?


『トモキが第一志望校に合格しますように』


それってつまり、俺への激励メッセージだろ?


俺が見てはいけない道理がない。


もちろんユカリの筆跡は熟知している。ユカリの字なら、ひと目でそうだと判別できるほどに。


それでも、どんな字で書いてくれたのか無性に見たい!


もしもお守り袋が縫い閉じられていたら、ここで思い止まっていたと思う。


いくら中を開けたくても、ユカリが縫ってくれた糸を切るようなことはできないから。


しかし、紐で結んであるだけなのだ。


しかも結び目を完全に解かなくても、緩めるだけで中身が取り出せそうだ。

< 20 / 21 >

この作品をシェア

pagetop