どうか、決してほかの誰もこの可愛さに気づきませんように…
これはむしろ見てほしいんじゃないか?
後ろめたさを感じないように、俺自身を説得した。
急ぐ必要もないのに大慌てで手袋をはずして、ポケットの奥に詰めた。
お守り袋の口をそうっと開くと、出てきたのは折り畳まれた小さな白い紙。
かじかむ指先では広げるのに苦労するほどの小ささだ。
完全に広げてもまだ小さかった。
片方の手のひらに、はみ出すことなく完全に乗る。
その正方形の真ん中には、
『トモキが第一志望校に合格しますように』
と、力強く横書きされていた。
けれど、それだけではなかった。
その下、紙のギリギリ下端に、よくもまあこんなちっちゃい文字が書けるな、と感心するような極小の文字が並んでいた。
『そして、トモキがいい加減、私の気持ちに気づきますように』
心臓が震えた。
どっちが最強に鈍感なんだよ?
あれだけユカリのことを見ておいて!
俺の羞恥心なんて、木っ端微塵に弾け飛んだ。
お守りを握り締めて、全力で駆け出した。
俺はユカリの家に引き返していた。
おしまい