どうか、決してほかの誰もこの可愛さに気づきませんように…
しかし、だ。
考えようによっては、それはまだマシなのかもしれない。
今後は俺のように、この唯一無二の可愛いさを見つける男が現れるとも限らないじゃないか。
高校では俺がガードできないんだから。
そうなってしまったとき、俺はどうしたら……
「トモキの番だよー」
「うおっ!」
不意に覗きこまれて、心臓が跳ねた。
ユカリの顔が間近に迫っていた。
咄嗟に目を逸らそうとして、視線がユカリの口元にいった。
あっ、やべえ……
その小さな唇に自分のそれを重ねたい衝動が全身を駆け抜けた。
俺は、バクバクする心臓を必死になだめた。
「ぼーっとしてたね。神様へのお願いをどうするか考えてたとか?」
そうか、神様がいたんだった!
「でも、『第一志望校に合格できますように』の一択じゃないの?」
違うっ!
財布から賽銭用のお金を抜き出した。
「えっ、博士!?」
そう、俺が手にしているのは野口英世博士だ。
俺はもう神様にすがるしかない!