オレンジ服のヒーローの一途な愛
「一昨日俺と彼女が幹事の合コンしたとき、非番だったから途中で招集が来て帰っちゃったんだよ。そしたらアドレスが知りたいって、合コンに来てた子全員から俺の彼女に問い合わせが来たらしい。翔太には断られたけど」
「そうなんだ……」

翔ちゃんはあまりそういう場を好まないらしいけど、兄は合コンの人数合わせでよく翔ちゃんを引っ張って連れていく。
今回は途中で帰ったのか。
仕事で呼び出された翔ちゃんには申し訳ないけど、少しホッとする。
知らない女の子たちと話しているのなんて、想像したくない。

「ずるいよなあ。昔からあいつばっかりモテてさ」
「お兄ちゃん、彼女いるんだから別にいいじゃない」
「そうだけどさあ」

兄は腑に落ちないようで、ぶつぶつと文句を言っている。

「ま、あいつは女の子と連絡先の交換は絶対しないからな。連れてってもあんまり愛想良くないし」

複雑な気持ちになって思わず少し沈黙してしまったけど、兄には勘付かれなかったようだ。
連絡先の交換を絶対しないというのは、他に彼女がいるか、もしくは好きな人がいるからなんだろう。
兄にも翔ちゃんにも、そういう話は聞いたことがない。
怖くて聞けないのだ。
聞かなくたって、この気持ちが叶うことがないのは当の昔から知っているというのに。


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