オレンジ服のヒーローの一途な愛
チケットカウンターのそばの明るい場所に出ると、翔ちゃんは私を待合用のソファにおろして私の前にしゃがむ。

「まだ動悸がするか?」

する、けど…これはさっきの動悸と同じものなんだろうか。
いや、どう考えてもお姫様抱っこのせいだと思う。

「だいぶよくなったかも。なんでかな」
「多分昨日のでちょっと暗所が怖くなってるんだと思う」
「あ」

そうか。確かに暗闇に入るとき、怖い感覚があった。

「そういうケースけっこうあるんだ。エレベーターとか事故起こした車の中に閉じ込められた人が、暗所や閉所がしばらく苦手になったりする」
「そうなんだ」
「少し落ち着くまで待とうか」

翔ちゃんは隣に座ると、私の手にそっと自分の手を重ねて握る。
安心させようとしてくれているんだろうけど、私は安心どころかまた動悸がしてくる。
手から早すぎる脈動が伝わっていないといいんだけど……
救急救命士の資格を持っている翔ちゃんは、そういうことに敏そうだから余計に心配だ。

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