オレンジ服のヒーローの一途な愛
寒いくらい冷房がきいた館内で、握られた手から伝わる温もりが心地いい。
こんなふうに手を握るのはいつぶりだろう。
きっと出会ったころ、私が小学生の時以来だと思う。

「初めて会った時のこと、覚えてるか?」

私と同じことを思ったのか、翔ちゃんが唐突に言った。

「お兄ちゃんがウチに翔ちゃんを連れてきたときだよね?高校1年の春」
「いや、家に行く前にさ」

翔ちゃんは思い出したようにふっと噴き出す。

「大樹の家の手前の公園で泣き声が聞こえたんだよ。見たら、アスレチックの丸太の間に身体ごとハマって抜けなくなってる女の子がいてさ」
「あ」

思い出した。
友達が先に帰った後、最後にアスレチックで遊んでから帰ろうと思っていたら、見事にハマって抜けなくなってしまったのだ。
そうか、翔ちゃんとの出会いはあれが最初だったのか。
恥ずかしすぎる。

「大樹に、俺の妹はドジだし運が悪いって聞いてたけど、あれは初っ端からパンチがきいてたな」
「う……最初にあんなの見られちゃったら、そのイメージが定着しちゃうよね」
「イメージだけならいいけど、実際それからもドジったり運が悪かった場面は何度も見てるぞ」
「そうだけど……」
「だから大樹が過剰に心配するのも無理はないよ。あおいは危なっかしいからな」

翔ちゃんにとっても、私は『危なっかしい妹』という認識なんだろうな。
それも仕方がない。
翔ちゃんは私が10歳の頃から知っているんだから本当に妹みたいなものだ。
今さら女として見てもらえるわけがない。
だけど、私は出会ったばかりの頃から翔ちゃんに憧れを抱いていて、それはいつのまにか誤魔化すことのできないくらい大きな恋心へと変わっていた。
おかげで片思い歴は10年以上。
今まで他の男性を好きになったことがないため、恋人がいた経験もない。

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