オレンジ服のヒーローの一途な愛
ショッピングモールを出て、鮮やかな青い夏空の下一時間ほど車を走らせると、海岸沿いへ出た。
キラキラと揺らめく水面とその周辺の浜辺に、たくさんの人の姿が見える。
駐車場に車を停めて外へ出れば、潮の匂いが香った。
真夏日だけど、海風が吹いていて暑さはあまり感じない。
なびく髪をおさえながら石の階段を下りると、ミュールに入り込んだ砂がさらさらとした足裏をくすぐった。

「気持ちいいな」
「うん、海きれいだね」

水着姿の若い子たちが、ビーチバレーをしたり、パラソルの下でくつろいでいる。
青春だなあ、なんて微笑ましく見る私はもう気持ちが老いているんだろうか。
砂浜を歩きながら海を眺めていたら、不意に右足が砂にとられてバランスを崩した。

「わっ!」
「おいっ」

傾いた身体が、固い胸に抱きとめられる。
柔軟剤の清潔な香りと、シャツ越しに伝わる体温に心臓が跳ねた。

「全く、ドジにもほどがあるぞ」
「ご、ごめん」

あまりにも近い位置で呆れ声が聞こえたから、動揺して声が裏返ってしまった。

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