オレンジ服のヒーローの一途な愛
「ほら」

身体を離した翔ちゃんが右手を差し出す。
これは、手を繋ぐってこと……?
恐る恐る左手を伸ばすと、翔ちゃんの大きな手がしっかりと触れた。
手を繋ぎ、ゆっくりと砂浜を歩いていく。
さっきは手を合わせて握っているだったけど、今は指を絡めて繋いでいる。
これは『恋人繋ぎ』ってやつだよね。
こんなの、小学生の頃だってしたことがない。
手汗かいてないかな。
やっぱり脈動が伝わっているんじゃないかな。
恥ずかしくてそわそわする。

「ここはライフセーバーも多そうだし、ブイロープもしっかり張られてるから、比較的安全かな」
「え、そんな目線で見てたの?」
「もう職業病みたいなもんだよ」

短髪が風に揺れ、横顔に苦笑いが浮かぶ。

「波もないから、浅瀬ならあおいが入っても大丈夫そうだな」
「海なんて高校の時に友達と来て以来だし、その時だって砂浜にいただけだよ」
「ああ、大樹が水着は絶対許さん!とか言って、普通の服で行ったから海に入れなかったってやつか」
「そう。水着着るなら俺が見張りについていく!って言い張るから仕方なく。友達にさんざん笑われた」

翔ちゃんはケラケラと笑う。
これもまた兄のシスコンエピソードのひとつで、友人たちにはいまだにイジられるのだ。
肩を揺らして楽しげに笑っていた翔ちゃんが、小さく息をついて少し沈黙した。

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