オレンジ服のヒーローの一途な愛
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私が勤めるエステサロンは、三階建てのこじんまりしたビルの最上階だ。
一階は老夫婦が営むレトロな喫茶店、二階は美容院になっている。
ここは九日商店街という昔ながらの店が立ち並ぶ通りで、ほとんどが年配の常連客のため、アットホームで仕事がしやすい。
サロンはカウンターと、メイクルーム、カーテンで仕切られた施術スペースがふたつ。
スタッフは店長の真希さんと私のふたりだけだ。
「ねえあおいちゃん、お見合いしない?」
「へ?」
開店前のモップ掛けの最中、真希さんの唐突な言葉に、鼻から抜けるような声が出た。
「私の姉の子で、30歳で建築士をしてるの。出会いが全然なくて、姉も心配しててね。あおいちゃん、彼氏いないって言ってたからどうかなって」
上目で窺うその表情には期待がこもっていて、どう答えればいいものか迷った。
「叔母の私が言うのもなんだけど、顔はけっこうかっこいいと思うの。性格も穏やかでやさしい子よ」
「そりゃ、真希さんの甥っ子さんなら、整った顔立ちなのは間違いないですよ」
「あら、そんなこと言ってもらうと照れるわ」
真希さんは口元に手を当ててふふっと上品に笑う。
お世辞じゃない。真希さんはもう50近いのに、若々しくてモデルさんでも通じそうなくらい美人だ。
「お見合いっていうと堅苦しいけど気負わなくていいから、ちょっと考えてみてくれないかな」
私は今まで合コンにも行ったことがないし、出会いというものが少なかった。
社会人になってからは、女性相手の仕事をしているため余計にだ。
真希さんが紹介してくれるというなら、これはいいきっかけなのかもしれない。
私はずっと翔ちゃんばかり見てきたから、もっと周りに目を向けるべきなのだろう。
わかってはいるんだけど……
「……はい、考えてみます」
小さく微笑んで答えてみたものの、あまり積極的な気持ちにはなれない。
誰と出会っても、結局翔ちゃんと比べてしまう気がする。
ダメだな、私。
これじゃいつまで経っても、この想いを消せない。
一階は老夫婦が営むレトロな喫茶店、二階は美容院になっている。
ここは九日商店街という昔ながらの店が立ち並ぶ通りで、ほとんどが年配の常連客のため、アットホームで仕事がしやすい。
サロンはカウンターと、メイクルーム、カーテンで仕切られた施術スペースがふたつ。
スタッフは店長の真希さんと私のふたりだけだ。
「ねえあおいちゃん、お見合いしない?」
「へ?」
開店前のモップ掛けの最中、真希さんの唐突な言葉に、鼻から抜けるような声が出た。
「私の姉の子で、30歳で建築士をしてるの。出会いが全然なくて、姉も心配しててね。あおいちゃん、彼氏いないって言ってたからどうかなって」
上目で窺うその表情には期待がこもっていて、どう答えればいいものか迷った。
「叔母の私が言うのもなんだけど、顔はけっこうかっこいいと思うの。性格も穏やかでやさしい子よ」
「そりゃ、真希さんの甥っ子さんなら、整った顔立ちなのは間違いないですよ」
「あら、そんなこと言ってもらうと照れるわ」
真希さんは口元に手を当ててふふっと上品に笑う。
お世辞じゃない。真希さんはもう50近いのに、若々しくてモデルさんでも通じそうなくらい美人だ。
「お見合いっていうと堅苦しいけど気負わなくていいから、ちょっと考えてみてくれないかな」
私は今まで合コンにも行ったことがないし、出会いというものが少なかった。
社会人になってからは、女性相手の仕事をしているため余計にだ。
真希さんが紹介してくれるというなら、これはいいきっかけなのかもしれない。
私はずっと翔ちゃんばかり見てきたから、もっと周りに目を向けるべきなのだろう。
わかってはいるんだけど……
「……はい、考えてみます」
小さく微笑んで答えてみたものの、あまり積極的な気持ちにはなれない。
誰と出会っても、結局翔ちゃんと比べてしまう気がする。
ダメだな、私。
これじゃいつまで経っても、この想いを消せない。