オレンジ服のヒーローの一途な愛
「あ、来たか」
「翔ちゃん今日休みなの?」
「週休だって。明日の朝から当務」

言いながら、兄はモニターを見ることなく廊下へ出て鍵を開けた。

「おう、お疲れ」
「お疲れ。お邪魔します」

聞き慣れた声なのに、今日は身体が硬くなる。
翔ちゃんに会うのは、ふたりで出かけたあの日以来なのだ。

リビングに入ってきた翔ちゃんはスーパーの袋を手に提げている。

「お疲れ、あおい」
「お疲れ様」
「大樹が空きっ腹で飲むと酔いが回ると思って食べ物色々買ってきた」
「ありがとう」
「あおいはもう夕飯済ませたか?」
「うん、今日はお店の一階にある喫茶店で店長と食べてきたの」
「そうか」

翔ちゃんはローテーブルの向かいに座り、兄は斜め向かいに座る。
普通に会話ができていることにホッとして、同時に恥ずかしい気持ちになった。
この前翔ちゃんはいつまでも男の人に縁がない私を揶揄っただけなのに、何を勝手に意識しているんだろう。

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