オレンジ服のヒーローの一途な愛
兄がビールとチューハイの缶を次々と取り出し、翔ちゃんが買ってきてくれた惣菜やつまみも並べられ、テーブルが埋め尽くされていく。
「大樹、ビール冷やさなくていいのか?」
「冷やさなくてもすぐ飲み干すし」
兄が拗ねた口調で早速ビールのタブを開ける。
相当投げやりになっているな。
今夜の宴は長くなりそうだ。
翔ちゃんはノンアルコールのビール、私はチューハイで、三人で乾杯だ。
そのあとはまさに兄の愚痴三昧だった。
どうやら、連絡しても返信が遅いしメッセージも素っ気ないと不満を言われて別れを切り出されたらしい。
「忙しいんだから仕方ないじゃん?深夜まで仕事することだってあるんだしさあ。俺の仕事は集中力第一なんだから、メッセージなんて返してる余裕ないよ」
「そうだよなあ」
失恋のたびに付き合わされている翔ちゃんは、兄を適当に宥めるのも慣れたものだ。
……だけど、集中力第一?
私が『夕飯いる?』とかメッセージを送ると、秒速で返ってくるんだけど。
絵文字付きで。けっこうな確率でハート付きで。
「しかも!しかもさあ、あおいがお見合いするとか言い出すしさあ」
「お見合い?」
顔を顰める翔ちゃんと目が合った。
「あおい、お見合いするのか?」
「そういう話が出てるっていうだけで、まだ具体的には……お兄ちゃんに『まだ俺のものでいてくれ』とか言われたし」
「お前は彼氏か」
翔ちゃんがすかさず兄に突っ込む。
「だってこの上あおいまでいなくなったらさあ」
兄は再び腕で目を覆い、この世の終わりみたいに大袈裟な声を出す。
ダメだ。完全に泣き上戸だ。
あくびが出て壁掛け時計に目をやると、もう0時だ。
いつもならとっくに寝ている時間だし、お酒を飲みすぎたのかだいぶ眠い。
それを見ていたようで、翔ちゃんが声を潜める。
「大樹、ビール冷やさなくていいのか?」
「冷やさなくてもすぐ飲み干すし」
兄が拗ねた口調で早速ビールのタブを開ける。
相当投げやりになっているな。
今夜の宴は長くなりそうだ。
翔ちゃんはノンアルコールのビール、私はチューハイで、三人で乾杯だ。
そのあとはまさに兄の愚痴三昧だった。
どうやら、連絡しても返信が遅いしメッセージも素っ気ないと不満を言われて別れを切り出されたらしい。
「忙しいんだから仕方ないじゃん?深夜まで仕事することだってあるんだしさあ。俺の仕事は集中力第一なんだから、メッセージなんて返してる余裕ないよ」
「そうだよなあ」
失恋のたびに付き合わされている翔ちゃんは、兄を適当に宥めるのも慣れたものだ。
……だけど、集中力第一?
私が『夕飯いる?』とかメッセージを送ると、秒速で返ってくるんだけど。
絵文字付きで。けっこうな確率でハート付きで。
「しかも!しかもさあ、あおいがお見合いするとか言い出すしさあ」
「お見合い?」
顔を顰める翔ちゃんと目が合った。
「あおい、お見合いするのか?」
「そういう話が出てるっていうだけで、まだ具体的には……お兄ちゃんに『まだ俺のものでいてくれ』とか言われたし」
「お前は彼氏か」
翔ちゃんがすかさず兄に突っ込む。
「だってこの上あおいまでいなくなったらさあ」
兄は再び腕で目を覆い、この世の終わりみたいに大袈裟な声を出す。
ダメだ。完全に泣き上戸だ。
あくびが出て壁掛け時計に目をやると、もう0時だ。
いつもならとっくに寝ている時間だし、お酒を飲みすぎたのかだいぶ眠い。
それを見ていたようで、翔ちゃんが声を潜める。